書誌情報[]
- タイトル
- ある理論経済学者のお話の本
- 責任表示
- ジョージ・A・アカロフ著 ; 幸村千佳良, 井上桃子訳
- 出版事項
- ハーベスト社, 1995.3
- 形態事項
- vi, 234p ; 21cm
- ISBN
- 4938551225
- 注記
- 各章末: 参考文献
- 別タイトル
- An economic theorist's book of tales : essays that entertain the consequences of new assumptions in economic theory
- 著者標目
- Akerlof, George A., 1940- ; 幸村, 千佳良 [コウムラ, チカラ] ; 井上, 桃子 [イノウエ, モモコ]
- 分類
- NDC9:331.04 , NDC8:331.04
- 件名
- BSH:経済学
目次[]
第1章 はじめに
第2章 「レモン」の市場:品質の不確実性と市場メカニズム
第3章 カーストの鼠の競争の経済学およびその他の悲惨な話
第4章 「札貼り(tagging)」の経済学
第5章 失業をもたらす可能性のある社会的慣習の理論
第6章 ダム用地としての仕事(Jobs)
第7章 認識の不一致による認知的不協和のもたらす経済的帰結
第8章 部分的贈物交換(gift exchange)としての労働契約
第9章 忠誠心フィルター(Loyalty Filters)
紹介[]
2001年にスティグリッツらとともにノーベル経済学賞を受賞したアカロフの論文集である。彼らの授賞理由は、情報の非対称性に関する理論の創設及び発展であったが、本書に収録されているのが、まさに情報の経済学などの分野で現在も頻繁に引用されている、先駆的な論文たちである(特に「レモン市場」論文はミクロ経済学の教科書にも載っているほど)。
手法自体は、部分均衡分析などの従来のツールを使いながら、(たとえばベッカーのように)経済合理性だけでいけるところまで突き進むのではなく、合理性の前提を見直し、社会学・人類学・心理学的知見を取り込んで、少しだけ変えてモデルを再構築してみると、こんなにおもしろいところまで進めるという「名プレイ」集でもある。論文のタイトルも、目次を見れば分かる通り、どれもふるっている。
第7章のタイトルにも含まれる"cognitive dissonance"という社会心理学の用語を、定訳である「認知的不協和」ではなく「認識の不一致」と訳してしまったのはご愛嬌だが、全体として訳文は読みやすいだけでなく、訳注の説明も親切かつ詳細で、実はそれほどわかりやすくない訳ではない原論文の理解を助けてくれる(特に「レモン市場」論文の訳注は秀逸)。